車線規制とは、高速道路の一般車が走行する車線を規制資器材(矢印板やコーン等)で仕切って規制を行うことで、規制を行う場所によって、
3種類の規制があります。

走行車線規制

走行規制と呼ぶことが多く、2車線道路では左側の走行車線で規制を掛けることです。

追越車線規制

追越規制と呼ぶことが多く、2車線道路では右側の追越車線で規制を掛けることです。

2/3車線規制

2/3規制(3分の2規制)と呼ぶことが多く、3車線道路において左側の走行車線と中央の車線、あるいは右側の追越車線と中央の車線を同時に規制することです。

車線規制では規制の距離が長くなり規制を示す標識の本数も多くなるため、通常は2tトラックを3台使用します。
平行部のコーンの数量が多くなるので1台はコーン設置用の専用車となり、1台は路肩規制と同じく標識車になります。残りの1台は標識を積載する専用車です。規制資器材は、NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)からの借用品と自社品を使用します。

車線規制は一般車が走行する車線で規制を掛けるため、交通渋滞が発生しやすくなります。
したがって、規制を行っていることや渋滞が発生していることを一般車に案内する後尾警戒車を路肩に配置をします。この後尾警戒車業務が、車線規制では必ず付随してきます。

元請けと当日の業務内容について
打合せ

当日の業務開始前、元請けと当日の業務内容についての打合せを行います。具体的には、規制を行う場所、工事車両の台数や規制箇所へ入る順番、作業内容に対する保安箇所の確認などです。こうした確認業務を行うことで、安全でスムーズな業務を実現します。

現場へ移動

出発時には、標識車の積載物(規制資器材)がロープ等で固定されているか確認します。

重量貨物車等の追い抜きの場合を除いて走行車線を走行しますが、万が一積載物が落下した場合に、路肩に飛散して一般車の走行を妨げないようにするためです。

また、積載物によって速度が上げられないため、無理な追い越しで一般車からの苦情が起きないようにするためでもあります。

規制設置

車線規制とは、一般車が走行する車線を封鎖する規制です。工事箇所の安全を確保するためですが、一般車にとっても、いきなり目の前に規制が掛かっていては、急ハンドルを切って車線変更をすることになり大変危険です。

そのため、規制を行う箇所の手前から、予告の標識を立てて周知を行います。また、一般車がスムーズに進路変更できるように矢印板でテーパー部を設置したり、工事が始まる箇所で案内の表示板も設置します。

1. 規制開始の連絡

規制を開始する場所の3km手前(夜間規制では5km)から標識を設置しますが、その際に規制開始の連絡を元請けに行うと同時にNEXCO中日本管制センターにも連絡を行います。
この連絡には高速道路の路肩に設置された非常電話を使いますが、連絡内容が定められており、正確な情報の伝達が必要になります。

また、規制開始時に渋滞が発生することが多いため、規制開始は規制箇所を管轄するNEXCO中日本の保全サービスセンターがカメラで交通量の確認を行い、交通量の少ないタイミングを見定めて規制を開始しています。

2. 標識の設置

『3km先工事中』(夜間では『5km先工事中』)を示す標識を始めとし、10本以上の標識を路肩のガードレール等に設置していきます。この標識はNEXCO中日本から借用した金具で設置しますが、ロープでガードレールと結ぶなどの飛散防止対策も同時に行います。

車線規制では、中央分離帯にも標識を設置しています。標識は重量物のため必ず2名で運搬しますが、路肩から中央分離帯までの2車線を横断するのは危険を伴います。
そこで、一般車が走行する間隔を見極めて横断するタイミングを合図し、設置中の警備員を保安する警備員を1名配置して安全に配慮しています。

3. テーパー部(矢印板)の設置

車線規制のテーパー部に設置する矢印板は枚数が多いため、資器材を乗せたトラックを移動させながらの設置になります。テーパー部の矢印板は、決められた間隔で設置する必要があります。
高速道路のセンターラインは一定の間隔で設置されているので、この間隔を利用して矢印板を等間隔に設置します。矢印板には土のうを乗せることで、飛散防止処置を施すこととしています。

なお、一般車が走行する車線にはみ出して矢印板を設置することから、追い出し員といって警備員が黄旗を振って一般車の進路変更を促したり、発煙筒を焚いて注意喚起を行います。

4. 標識車および周辺の規制資器材の設置

標識車を指定された位置に停め輪止めをし、ハンドルを一般車が走行する車線と反対側に切ります。こうすることで、仮に一般車が標識車に追突しても、標識車は一般車が走行する車線とは反対側に飛び出すことになり大事故になることを防ぎます。

標識車の周辺には、工事内容の案内看板、工事箇所である表示板や警告灯を立てます。それらは、土のうを乗せたりロープでガードレールや標識車の車体と結ぶことで飛散防止処置を施します。

車線規制では一般車が本来走行する部分での作業になり危険を伴うので、設置作業中は警備員1名を監視のための保安に必ず立たせ、他の警備員の安全を確保しています。

5. 平行部の設置

標識車から工事を行う箇所にかけてコーンを並べますが、この部分を一般的に平行部と呼んでいます。車線規制では平行部が長いので、コーンを積載したトラックを移動させながらセンターラインに合わせて設置をしていきます。
この時、トラックの荷台後部にコーン設置用の足場を取り付け、設置者が乗り込みます。トラックの荷台にはコーンを渡す役目の警備員が乗り、設置者にコーンを渡していきます。
平行部のコーンは等間隔に設置することが必要なため等間隔に書かれたセンターラインを利用しますが、トラックを一定の速度で移動させコーンを受け渡すタイミングを合わせることには熟練した技術が必要になります。

6. 工事車両出入り口看板の設置

工事個所の手前に、工事車両出入り口の看板を設置します。工事車両が規制内に入る時は、走行速度が急激に下がります。
工事車両の後方を走る一般車に注意を与えるため、出入り口看板の他に、100m手前に100m先工事車両出入り口という看板も設置します。
これらの看板は、土嚢を乗せるなどの飛散防止処置を施します。

7. 規制設置完了の連絡

工事車両出入り口看板の設置が完了した後、元請けに規制設置完了の連絡を入れます。この時、工事車両の台数や順番を再度確認します。

後尾警戒業務

規制の開始位置の手前の路肩に、後尾警戒車を配置します。移動の際は、車線規制を掛けるトラックの後ろについていき、決められた場所で停止します。

後尾警戒車には電光表示板が搭載されており、規制の種類、渋滞の有無などを表示します。高速道路の路肩には植栽が植えられており、決められた配置箇所では電光表示板の内容が隠れてしまうこともあります。この場合は、配置位置の調整を行うことも必要になります。

また、NEXCO中日本管制センターと繋がる無線機も搭載されています。この無線機を使用して、決められた配置箇所に到着した時や業務が終了して離脱する時の連絡を行います。

さらに、渋滞発生時には発生時刻、渋滞の長さなどを一定の時間間隔で報告することも行います。機器の操作や電光表示板での表示内容、無線での報告の内容などはNEXCO中日本から決められており、この後尾警戒車の運用については経験と知識が要求されます。

保安・誘導

工事規制は、そこで工事をする作業員の安全を守るだけでなく、走行している一般車の安全をも守るためのものです。

工事規制へ出入りする作業車両と一般車が接触しないか、一般車はスムーズに走行できているかなど保安・監視を行います。

  また、規制の中で作業する作業員や移動する作業車両が、作業に夢中になって規制の外へ出でしまわないかを誘導します。

1. 工事車両の流入

流入とは、工事車両を規制内に入れることを言います。警備員は黄旗(黄色い旗)を持って工事車両出入り口看板の位置に立ち、工事車両が走ってくるのを待ちます。
工事車両が見えると、平行部のコーンを1本抜いて工事車両が入りやすいようにし、次に黄旗を頭上で大きく振って工事車両入口看板の場所を教えます。

工事車両の流入後は、一般車が間違って規制内に入らないように黄旗を振って注意喚起を行い、その後抜いたコーンを戻します。

2. 作業箇所における保安業務

警備員は、黄旗を持って作業箇所の下流側に立ち、作業員と一般車の挙動の監視を行います。作業員は作業に夢中になるあまり規制外からに出てしまいそうになることもあり、そのような作業員には警笛を吹いて注意を与えたりします。

また、一般車の運転手は工事に見とれてしまうこともあります。走っている車両は運転手の視線の方向に向かってしまうことがあり、車両が規制内に突っ込んでくる可能性が有ります。
この場合も、警備員は警笛を吹いて規制内にいる作業員に注意を与えます。

作業箇所の下流とは、走っている一般車から見て作業箇所の向こう側のことです。反対に、手前側が上流側となります。

3. 規制の巡回

元請けが現場で作業をしている間は、基本的に警備員は作業員の保安作業が中心になります。 しかしながら、規制材に飛散防止対策を施してはいても、想定外の強風や一般車の接触などで転倒したり破損することもあります。そこで、定期的に現場内を巡回し、規制資器材の状況確認を行い、必要に応じて規制材の復旧作業も行います。
また、規制の手前に設置している標識を作業現場から目視することはできません。したがって、必要に応じ、警備員1名が現場を離れて標識の転倒確認を行うことが有ります。

4. 工事車両の流出

一日の作業が終わると、工事車両を規制内から離脱させます。これを流出といい、工事車両出入り口看板の位置から工事車両を規制外へ流出させます。

警備員は平行部のコーンを1本抜いて、工事車両が流出しやすい空間を作ります。走行している一般車の間隔を見切って、黄旗を振り警笛を鳴らして工事車両の運転手に流出の合図を送ります。
この時、一般車の間隔の目安は300mとしており、これより短い間隔では流出した工事車両との追突の危険があります。
より安全に工事車両を流出させるためには、一般車の速度と間隔を正確に読み取る必要があります。

工事車両の流出後は、抜いたコーンを戻します。流出後の工事車両は走行速度が遅いため、走行する一般車に黄旗を振って注意喚起を行います。

規制撤去

工事の作業が終了したら、速やかに工事規制を撤去して一般車が走行できる車線に戻さなければいけません。

工事規制を構成する資器材を無秩序に撤去しては、かえって一般車の走行を乱すことになるので、手順に従って安全に撤去することが必要です。

1. 平行部の撤去

規制の起点となるテーパー部から撤去を行うと、一般車から見て規制が終わったものと勘違いをしてしまいます。したがって、平行部の終点からコーンを回収していきます。

コーンの回収は、設置の際と同様にトラックを移動させながら行います。この時、トラックは後進しながらの移動になりますが、平行部のコーンを回収しやすくするために一定の速度を保つことも必要になります。
道路は直線部分だけでなく、カーブを描いている部分もあります。普通車を運転する際でも真っ直ぐに後進させることは難しいですが、直線とカーブを描いたセンターラインに沿って設置されたコーンに合わせてトラックを後進させるのは高い運転技術が要求されます。

2. 標識車付近の規制資器材の撤去

標識車の周りには、資器材が多く設置してあります。車線規制では普段は一般車が走行する部分に規制を掛けているため、テーパー部の矢印板を残し作業の安全を確保した中で工事案内の看板等を回収します。
この時、回収する警備員を保安するため、警備員1名は必ず黄旗を持って保安作業のために立っています。

テーパー部の矢印板を回収する際は、まず、一般車の飛び込みを防止するため発煙筒を焚いて注意喚起を行うと同時に、警備員による黄旗での車線移動の注意喚起も行います。

また、規制を掛けるための標識車以外のトラックも路肩に移動させ、不測の事態に備えます。テーパー部の回収が終わると、規制を行っていることを示す警告灯や表示板を消灯し、積載物をロープ等でしっかりと固定します。

3. 規制撤去完了の連絡

車線規制の規制を撤去した後、路肩部分を倉庫して直近の非常電話まで移動します。非常電話を使ってNEXCO中日本管制センターに連絡を取り、規制を撤去し車線部分を解放したことを告げます。同時に、元請けに対しての報告も行います。

現場離脱

路肩の中を徐々に標識車の速度を上げながら走行し、一般車の間隔を見極めて走行車線へと移動して現場から離脱をします。離脱をする際、全ての警備員がトラックに乗り込んでいるので合図を出してくれる警備員はいません。したがって、運転手自らが一般車を危険にさらさないよう細心の注意を払って離脱を行う必要が出てきます。

離脱時は、工事用車両を離脱させる際と同様に一般車の間隔が300m離れていることを目安としますが、標識車が路肩内を走らせることで走行車線への移動するまでに速度に上げておきスムーズに走行車線に入れるようにします。

離脱後の走行中は、重量貨物車等の追い抜きの場合を除いて走行車線を走行します。万が一積載物が落下した場合に、路肩に飛散して一般車の走行を妨げないようにするためです。

また、積載物によって速度が上げられないため、無理な追い越しで一般車からの苦情が起きないようにするためでもあります。

標識の撤去と完了の報告

現場離脱後は、直近のインターチェンジで反転し、規制開始前に設置した標識の撤去に向かいます。

標識を全て撤去した後、非常用電話を使用してNEXCO中日本管制センターへ標識撤去完了の報告を行い、同時に元請けにも報告を行います。

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